父親の原罪が息子を救うか
Nature Neuroscience
2012年12月17日
コカインを摂取した雄ラットでは遺伝的変化が引き起こされ、仔の雄ラットでコカイン探索行動が減少する結果になるという報告が、今週のオンライン版に掲載される。
R Christopher Pierceたちは、交尾に先立つ60日間にわたってコカインを自己投与するに任せた雄ラットから生じた雄の仔は、中毒性の行動に対する耐性が強かったことを発見した。一方、雌の仔ではこの影響は観察できなかった。
内側前頭前野(mPFC)という脳領域における脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる遺伝子の発現増強は、げっ歯類での麻薬探索行動を抑制するとされており、また事実、Pierceらはこれら雄の仔ではmPFCでのBDNF発現が増強していることを発見した。これら動物におけるBDNF遺伝子の解析により、アセチル化(遺伝子に対する化学的修飾の一種で遺伝子発現の増強をもたらす)が増加していることがわかった。BDNF遺伝子でアセチル化が増加した状態は父親の精子でも発見できたため、コカイン摂取に応答して変化が生じ、それが子孫に伝達されたことが示唆された。
ヒトの多くの疫学データは親のコカイン摂取が子どもにおける麻薬摂取の可能性増加につながることを示唆しており、今回の発見はこれと矛盾している。ただし、麻薬中毒の継承について完全に理解するには、麻薬乱用における生物学的影響と環境からの影響とを注意深く評価する必要があり、この研究はその事実を強く示す役割を果たしている。
doi:10.1038/nn.3280
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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