海水準の上昇が加速する北米の大西洋沿岸
Nature Climate Change
2012年6月25日
世界で海水準の上昇率が最も高いのは北米の大西洋沿岸で、その上昇の勢いが加速していると考えられることを報告する論文が、今週、Nature Climate Change(オンライン版)に掲載される。特に高潮条件下では、海水準の上昇傾向によって、沿岸都市の洪水に対する脆弱性が助長され、沿岸の湿地生息地が破壊されることが、今回の研究で示唆されている。
気候温暖化は、陸上の氷の融解と水の熱膨張を通じて海水準の上昇を引き起こす。ところが、海水準の上昇には地域差があると予想され、その原因としては、海流、海水の温度と塩分の変化、そして、地球の自転と形状などさまざまな要因が挙がっていた。
今回、A Sallengerたちが特定した海水準上昇の「ホットスポット」は、北米東海岸(米国ノースカロライナ州ハタラス岬の北側)の1,000キロメートルにわたる地域だ。これは、世界で最も人口の密集した沿岸地域で、ボストン、プロビデンス、ニューヨーク市、フィラデルフィア、ボルチモア、ノーフォーク・バージニアビーチが含まれる。Sallengerたちは、検潮器データの解析を行い、1950~1979年と1980~2009年の期間中に、このホットスポットで観測された海水準上昇率が世界平均の約3~4倍に達しており、コンピューターシミュレーションで予測された海水準上昇の特徴とも一致していることを明らかにした。 このように海水準上昇に地域的なホットスポットが見つかったことは、塩湿地の冠水の予測や陸地が海によって浸食されている沿岸の都市や地域社会における適応対策の計画に役立つ可能性が高い。また、今回の研究で得られた知見は、海水準上昇に関して、現実世界をより的確に反映したモデルを開発し、精緻化するためにも役立つだろう。
doi:10.1038/nclimate1597
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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