Research Press Release
親からの助けで海洋の温暖化・酸性化に順応する
Nature Climate Change
2012年7月2日
珊瑚礁にすむ魚類が、温暖化、酸性化した海洋条件(例えば、21世紀末に関するモデル研究で予測されたような条件)に長い世代をかけて順化する能力を有することが明らかになった。この新知見は、一部の海洋生物が、これまで考えられていた以上に気候変動の影響に対する回復力が高い可能性を示している。この結果を報告する論文は、今週、Nature Climate Change(オンライン版)に掲載される。
海水の温暖化、酸性化又はその両者がもたらす悪影響は、すでにさまざまな海洋生物について実証されているが、生物種が複数世代をかけて、こうした変化に適応する過程を調べる研究は稀だった。今回、G Millerたちは、実験的条件下で、海洋の温度とpH条件を将来予測として妥当なレベルに変化させた場合に、クマノミの稚魚の状態と生存率が低下するが、親魚も同じように変更後の条件下に置いた場合には、こうした悪影響が見られないことを明らかにした。
今回の研究で得られた知見は、親からの非遺伝的な影響が、海洋酸性化による影響を緩和するうえで重要な役割を果たしている可能性を示している。
doi:10.1038/nclimate1599
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
環境科学:火山活動が中世ヨーロッパにペストをもたらしたかもしれないCommunications Earth & Environment
-
人工知能:チャットボットは投票意向に影響を与えるかもしれないNature
-
社会科学:不安定なビデオ通話は、会話だけでなくそれ以上のものを損なうNature
-
天文学:衛星による光害が宇宙天文学研究を脅かしているNature
-
素粒子物理学:風変わりなクォーク四重項の定量化Nature
-
動物の行動:病気のアリはコロニーを守るため自ら犠牲となるよう合図するNature Communications
