Research Press Release
古い薬をアメーバ症に再活用
Nature Medicine
2012年5月21日
関節リウマチの治療薬として認可されているオーラノフィンが、世界中に広く見られる寄生虫、赤痢アメーバ Entamoeba histolytica の感染の新しい治療法として役立つかもしれない。この発見によって、既存の薬の新たな用途を探すことの有用性が浮き彫りになった。
赤痢アメーバは命にかかわる可能性のある感染症、アメーバ症の原因になる腸内寄生虫で、毎年約70000人が死亡している。Anjan Debnathたちがこの病気の治療に使える新しい抗生物質のスクリーニングを行ったところ、米食品医薬品局(FDA)が認可している関節リウマチ治療薬オーラノフィンが、試験管内で、また赤痢アメーバ感染の2匹の動物モデルで、赤痢アメーバの成長を阻害することがわかった。Debnathたちは、オーラノフィンが赤痢アメーバのチオレドキシンレダクターゼ(酸素代謝による損傷に対する防御機構にかかわる酵素)を阻害するために、赤痢アメーバの酸化ストレス感受性が高まると考えている。
この知見の臨床的な有用性を考慮して、FDAはオーラノフィンのヒトアメーバ症治療への利用も認めることとした。
doi:10.1038/nm.2758
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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