Research Press Release
光起電力技術による自己給電式人工網膜
Nature Photonics
2012年6月14日
自己給電式人工網膜が開発されたことが、今週のNature Photonics電子版に報告されている。この人工網膜は、電力供給用のワイヤーやコイルを埋め込む必要がないので、従来のものより埋め込む部品が少なくて済む。研究にはラットが使われているが、この技術は失明した人の視力回復に役立つ可能性がある。
現在の人工網膜は、失明した人の視力をある程度回復できるが、一般的に誘導コイルを用いて電力供給しているため、必要な部品を埋め込むために複雑な外科手術が必要になっている。このたびJames Loudinらは、人工網膜デバイスの各ピクセルにシリコン・フォトダイオードを取り付けることによって、自己給電式人工網膜を開発した。装着させたゴーグルから近赤外パルスが放出され、電力とデータが直接フォトダイオードに伝送される仕組みである。研究チームは、近赤外光で動作するフォトダイオードを用いてラットの健常網膜と変性網膜の体外電気刺激に成功しており、この設計の妥当性を実証している。
本研究で用いられたパルスは眼の安全限界を超えておらず、この技術が人間に対しても安全に使える可能性が示されている。
doi:10.1038/nphoton.2012.104
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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