Research Press Release
新しい神経細胞が肥満の原因?
Nature Neuroscience
2012年3月26日
脳には摂食行動とエネルギー消費を調節するとされる領域があり、高脂肪食をとったマウスはこの脳領域に新しい神経細胞が増えることが、今週の Nature Neuroscience誌電子版の論文で報告されている。同じ仕組みがヒトにも見つかれば、この成果から食事性の体重増加や肥満と戦う治療介入に有望な 新しい標的が得られるかもしれない。
脳の視床下部は多くの代謝過程の調節にかかわる領域で、食物摂取やホルモン分泌、エネルギー消費などを制御する。Seth Blackshawらは、視床下部の正中隆起とよばれる特徴的な部分に新たな神経細胞が生じており、高脂肪食を与えられたマウスではその生成が高まってい ることを発見した。この神経細胞の新生を阻害すると、マウスは高脂肪食で飼育されても著しく体重が減り、エネルギー消費が増えた。
脂肪の多い食物の摂取は肥満など多くの健康問題に関連している。この研究結果は、こうした影響のいくつかが視床下部の新しい神経細胞の生成を 介する可能性を示唆する。新たに生成した神経細胞はエネルギー消費の減少にかかわり、この余ったエネルギーを脂肪のかたちで貯蔵するのを促す のかもしれない。
doi:10.1038/nn.3079
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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