RNAマイクロスポンジで効率よく遺伝子サイレンシング
Nature Materials
2012年2月27日
遺伝子サイレンシングRNA(siRNA)を細胞に運ぶマイクロスポンジが、今週のNature Materials電子版に報告されている。このマイクロスポンジは、キャリアとカーゴの両方の役割を果たす。従来のsiRNA送達ビークルと比較すると、1000分の1の濃度のマイクロスポンジで同程度の遺伝子サイレンシング効果が実現できることが、腫瘍担持マウスの実験で明らかになった。 これまでsiRNA送達がうまくいかなかったのは、キャリアのRNA封入効率が良くないことと、細胞に取り込まれる前にRNAが分解されてしまうことに原因があった。Paula Hammond らは、RNA増幅技術を利用して、環状DNA鋳型からヘアピン状RNAストランドがいくつもつながった非常に長い鎖を作製した。これらの鎖が自己集合することによってスポンジのような微小球(ひだ状に折りたたまれた結晶シートからなる)を形成することが観察された。ヘアピンRNAは細胞内で切断されてsiRNAを形成するので、ヘアピンRNAスポンジは安定なカーゴとして機能すると同時にキャリアとしても機能する。また、Hammond らは、細胞取り込みを促進するために、高電荷ポリマーでコーティングすることによってマイクロスポンジを10分の1の大きさにした。ポリマーでコーティングされたそれぞれのマイクロスポンジは、細胞あたり50万を超えるsiRNAコピーを送達することが明らかになっている。
doi:10.1038/nmat3253
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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