Research Press Release
痛みを消す光のスイッチ
Nature Methods
2012年2月20日
スイッチを入れたり切ったりしてラットの疼痛感知ニューロンの活性を遮断することができる分子が、今週のオンライン版『Nature Methods』で発表される。これは、痛覚を制御するツールとして、科学および臨床の両面で潜在的な有用性を秘めている。 局所麻酔薬は、疼痛感知ニューロンの活性を遮断することによって痛覚を抑制するが、そうした薬剤の多くは、神経系の全細胞に対して非選択的に作用する。疼痛感知ニューロンに優先的に作用する薬剤も存在するが、その作用は何時間も持続する。 疼痛感知ニューロンの活性を自在かつ可逆的に遮断することができる分子を開発するため、Richard H. KramerとDirk Traunerは、QAQという分子を合成した。これは、先行して使用されているリドカイン誘導体に構造が類似している。疼痛感知ニューロンに選択的に進入するのに用いるメカニズムは同じであるが、その活性は光で制御することができる。QAQは、異なる色の光に反応して2種類の立体配座をとり、その一方のみが疼痛抑制作用を発揮する。スイッチを入れるのは紫外光で、切るのは緑色光である。研究チームは、生きているラットの網膜でQAQが光感受性鎮痛薬としての性能を発揮することを示した。
doi:10.1038/nmeth.1897
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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