医学:豚からヒトへの腎臓移植の長期経過観察
Nature
2025年11月14日
脳死患者における豚由来の腎臓の人体移植に対する免疫応答を、2か月間にわたって詳細に分析した結果を報告する2つの論文が、今週のNature に掲載される。これらの知見は、異種移植の失敗要因とその指標に関する理解を深め、将来の研究で患者の予後改善を目指すうえで貢献する可能性がある。
異種移植(異なる種間の臓器移植)は、末期臓器不全患者のドナー不足に対する潜在的な解決策として提唱されてきた。遺伝子組み換え豚の腎臓の移植と免疫応答を抑制する治療の併用は一定の成果を示している。しかし、臓器拒絶反応はあらゆる移植に共通する合併症であり、異種臓器使用時にはさらに解明が進んでいない。拒絶反応を引き起こす免疫応答の全容は、これまでの研究が追跡期間の短さに制限されていたため完全には解明されていない。
Robert Montgomery、Brendan Keatingら(ニューヨーク大学ランゴーン医療センター〔米国〕)は、脳死患者に遺伝子組み換え豚の腎臓を移植した後の比較的長期にわたる免疫応答を詳細にマッピングした。その結果、実験終了までの61日間、腎臓は生命維持機能を発揮し続けたことが判明した。この期間中に2度の拒絶反応が発生したが、既存の治療法によって効果的に管理され、腎機能も安定していた。著者らは、移植に対する免疫細胞動員の主要経路を特定し、2つ目の論文でこれらの経路に関連するゲノム解析結果を明らかにした。
これらの研究は、遺伝子組み換え豚の腎臓の異種移植に対するヒト免疫応答を詳細に描き出したものである。今後、これらの知見を応用し、長期的な移植成功の促進に向けてさらなる研究が必要である。
- Article
- Published: 13 November 2025
Montgomery, R.A., Stern, J.M., Fathi, F. et al. Physiology and immunology of pig-to-human decedent kidney xenotransplant. Nature (2025). https://www.nature.com/articles/s41586-025-09847-6
- Article
- Published: 13 November 2025
Schmauch, E., Piening, B.D., Dowdell, A.K. et al. Multi-omics analysis of a pig-to-human decedent kidney xenotransplant. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09846-7
doi:10.1038/s41586-025-09847-6
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