動物の行動:ネグレクトされた子犬は成犬になるとより攻撃的で恐怖心が強くなる
Scientific Reports
2025年10月3日
幼犬期にネグレクトを受けた犬は、成犬期に恐怖心や攻撃性を示す可能性が高く、特定の犬種ではこうした行動傾向がより顕著になることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。英語圏の飼い主を対象に211犬種を調査した本研究では、アメリカン・エスキモー・ドッグなどの犬種が幼少期の逆境に関連する強い反応を示し、遺伝的差異がこうした経験に対する感受性に影響を与える可能性が示唆された。
これまでの研究では、子犬期のトラウマや有害な経験に晒された犬が恐怖や攻撃的行動を発達させる可能性が示されているが、実証データの不足から、犬種特有の無視への反応が存在するかは不確かであった。
Julia Espinosaら(ハーバード大学〔米国〕)は、2022年10月から2024年7月にかけ、年齢中央値5.42歳の犬4,497頭から収集したデータを「犬の行動評価および調査アンケート(C-BARQ:Canine Behaviour Assessment and Research Questionnaire)」を用いて分析した。飼い主は、突然の大きな音や見知らぬ人の玄関への接近など、攻撃的・恐怖行動の45の一般的な誘因に対する犬の反応を報告した。著者らは次に、これらの誘因に対する犬の反応(噛みつこうとする、噛む、後ずさり、および隠れようとするなど)と、子犬期に経験した逆境(トラウマ、虐待、および負の行動として特徴付けられる)の例との潜在的な相関関係を調査した。
調査対象犬の3分の1が、生後6か月以内に逆境を経験していた。これらの犬は、逆境を経験していない犬に比べ、成犬期の攻撃性および恐怖のスコアが有意に高かった。逆境が行動に及ぼす影響は、性別、年齢、および去勢の有無といった他の要因と同等かそれ以上であった。犬種別の分析では、アメリカン・エスキモー・ドッグなど一部の犬種が幼少期の逆境に特に敏感であることが示された。一方、ラブラドール・レトリーバーなどの犬種は、逆境の影響を比較的受けにくく、経験の有無にかかわらず、恐怖や攻撃行動のレベルに差が見られなかった。
この結果は、人間と同様に犬においても幼少期の否定的経験が生涯にわたる心理的影響をもたらし得ることを示唆している。著者らは、本研究が飼い主の報告に依存している点に制限があると指摘し、今後の研究が対象を絞ったリハビリテーション戦略の支援や、リスクの高い犬種の再譲渡判断の指針となる可能性を示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 02 October 2025
Espinosa, J., Zapata, I., Alvarez, C.E. et al. Influence of early life adversity and breed on aggression and fear in dogs. Sci Rep 15, 32590 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-18226-0
doi:10.1038/s41598-025-18226-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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