動物の行動:ヒョウアザラシの歌はクラシック音楽よりも童謡に似ている
Scientific Reports
2025年8月1日
東南極のヒョウアザラシ(leopard seal、Hydrurga leptonyx)の歌の構造は、予測のしやすさの点でクラシック音楽よりも子どもの童謡に類似していることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究では、この歌の構造が、アザラシ個体の「信号」が伝達中に劣化することを防ぐ役割を果たす可能性が報告されている。
オスのヒョウアザラシは、夏の間は単独で広範囲に分散して生活するため、遠くからでも認識されるよう、少数の「アルファベット」のような音で構成される長距離の鳴き声を発達させてきた。この鳴き声は、音楽と構造が類似しており、予測しやすさやランダム性にばらつきが見られる。
Lucinda Chambersら(ニュー・サウス・ウェールズ大学〔オーストラリア〕)は、1992 年から 1994 年、および 1997 年から 1998 年の 11 月から 1 月にかけて、東南極のデービス海(Davis Sea)沿岸地域で録音したヒョウアザラシの鳴き声を分析した。この録音から、高音の二重トリル、中音の単トリル、低音の下降トリル、低音の二重トリル、そして低音の単トリルを含む5 つの異なる鳴き声(または「音符」)が特定された。これらのトリルは、ヒョウアザラシの歌のメロディーを構成しており、その予測しやすさについて評価された。これにより、著者らは、Golden Song Bookに掲載されている 39 編の童謡と比較し、ヒョウアザラシのメロディーのランダム性の程度を評価することができた。スコアが高いほど予測困難であることを示す。分析された26頭のヒョウアザラシの推定予測可能性スコアは、0.63から1.38の範囲であった。一方、童謡の平均予測可能性スコアは0.82であった。
著者らは、ヒョウアザラシの歌はビートルズ(スコアは2.12から3.31)やモーツァルト(スコアは3.03から4.84)などのクラシック作曲家の音楽よりも制約が強く、予測がしやすいと指摘している。著者らは、ヒョウアザラシの鳴き声のシーケンス構造には個体の身分に関する情報が含まれている可能性があり、この特徴はマッコウクジラ(sperm whales)などでもこれまでに確認されている。
- Article
- Open access
- Published: 31 July 2025
Chambers, L.E.H., Buck, J.R. & Rogers, T.L. Leopard seal song patterns have similar predictability to nursery rhymes. Sci Rep 15, 26099 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-11008-8
doi:10.1038/s41598-025-11008-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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