人類の進化:アフリカからの移動に先立つ、人間の生息域の大幅な拡大
Nature
2025年6月19日
約5万年前にアフリカから人類が大移動した際、それに先立って人類が選んだ生息地の多様性が増加していたということを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この拡大が、古代の人類に新しい環境で成功するための生態学的柔軟性を与えた可能性があり、人類の移動についてのさらなる洞察を与えてくれる。
現在の遺伝学的証拠によると、現代のユーラシア大陸の人々は、祖先のほとんどを約5万年前にアフリカから移動してきた小さな集団に遡ることができる。しかし、化石証拠によると、これより前にも複数の移動があったものの、長期的な定住には至らなかった。このことから、なぜ5万年前の移動だけが成功したのかという疑問が生じる。
Emily Hallett(ロヨラ大学シカゴ校〔米国〕)とEleanor Scerri(マックス・プランク人類史科学研究所〔ドイツ〕)らは、12万年前から1万4千年前のアフリカ各地の考古学的遺跡から得られた証拠を集約した。著者らは、種の分布モデリングを用いて、葉面積指数、年間気温範囲、および降水量などの変数によって決定される、人類にとっての生息地の適合性を再構築した。その結果、人間の生息域(human niche)は7万年前から拡大し始め、特に西アフリカ、中央アフリカ、および北アフリカで拡大し、森林や乾燥砂漠など、より多様な生息地を利用する人間が増加したことがわかった。著者らは、このような適応性の向上により、古代人はアフリカを離れる際に直面した様々な条件に対処することが可能になり、5万年前の移住が長期的に成功したことの説明となった可能性を示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 18 June 2025
Hallett, E.Y., Leonardi, M., Cerasoni, J.N. et al. Major expansion in the human niche preceded out of Africa dispersal. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09154-0
doi:10.1038/s41586-025-09154-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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