心理学:メンタルヘルス問題を抱える10代の若者は、ソーシャルメディアに多くの時間を費やしている
Nature Human Behaviour
2025年5月6日
英国の青少年(11歳から19歳)でメンタルヘルス問題がある者は、そうでない者よりもソーシャルメディアに費やす時間が長いことが、3,000人以上の青少年を対象とした研究で明らかになったことを報告する論文が、Nature Human Behaviour にオープンアクセスで掲載される。青少年におけるソーシャルメディア利用のこのような違いを理解することは、適切な臨床的介入をデザインするのに役立つ可能性がある。
青少年におけるソーシャルメディアの利用は広く普及しており、英国では12–17歳の93%が少なくとも1つのソーシャルメディア・プロフィールを持っている。同時に、青少年のメンタルヘルスは悪化している。これまでの調査によると、英国では7–16歳の6人に1人、17–19歳の4人に1人がメンタルヘルス問題を抱えているとされている。
Luisa Fassiら(ケンブリッジ大学〔英国〕)は、英国在住の11から19歳の青少年3,340人を対象とした調査データ分析を実施し、そのうち16%が少なくとも1つのメンタルヘルス問題を抱えていると診断された。著者らは、メンタルヘルス問題を持つ参加者は、ソーシャルメディアに費やす時間が有意に長いことを発見した(1日平均約50分多い)。さらに、メンタルヘルス問題を持つ参加者は、そうでない参加者と比べて、ソーシャルメディア上の友人の数に対する満足度が低いこともわかった。また、うつ病や不安障害などの内在化障害を持つ参加者は、ソーシャルメディアにより多くの時間を費やし、ソーシャルメディア上でより多くの人と自分を比較し、オンライン上のフィードバック(投稿に寄せられた「いいね!」、シェア、およびコメントの数)が自分の気分に与える影響が大きいこともわかった。また、これらの参加者は、オンライン上の友人の数に満足しておらず、ソーシャルメディアへの投稿で自分の気持ちを正直に伝える傾向が低かった。
著者らは、ソーシャルメディアの利用と青少年のメンタルヘルスの状態との因果関係を明らかにするためには今後の研究が必要であり、今後の研究には他の国の参加者も含めるべきだと指摘している。
- Registered Report
- Open access
- Published: 05 May 2025
Fassi, L., Ferguson, A.M., Przybylski, A.K. et al. Social media use in adolescents with and without mental health conditions. Nat Hum Behav (2025). https://doi.org/10.1038/s41562-025-02134-4
doi:10.1038/s41562-025-02134-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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