進化:初期の人類は100万年以上前に過酷な砂漠の条件に適応した
Communications Earth & Environment
2025年1月17日
ホモ・エレクトス(Homo erectus)は、少なくとも120万年前には砂漠のような環境に適応し、生き延びることができていたと報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この発見は、行動の適応には、新鮮な水を得るために特定の川や池に何千年もの間繰り返し戻ることや、特殊な道具の開発が含まれていたことを示唆している。著者らは、この適応能力がホモ・エレクトスの地理的範囲の拡大につながったかもしれないと提案している。
初期の人類が砂漠や熱帯雨林などの極端な環境で生き延びる適応能力をいつ獲得したかについては、これまで活発な議論が交わされてきた。これまでの研究では、そのような環境に適応できるのはホモ・サピエンス(Homo sapiens)だけであるという結論が頻繁に導き出されていた。
Julio MercaderとPaul Durkinらは、初期の人類の重要な遺跡であるタンザニアのオルドゥパイ峡谷(Oldupai Gorge)にあるエンガジ・ナンヨリ(Engaji Nanyori)で、考古学、地質学、および古気候学のデータを収集した。著者らは、約120万年前から100万年前にかけて、この地域では半砂漠状態が続き、特徴的な植物相が存在していたと報告している。考古学的データによると、この地域のホモ・エレクトスの集団は、池などの淡水が利用できる場所に繰り返し戻って生活し、スクレーパーや抉入石器(歯状器)などの特殊な石器を発達させることで、その期間にわたってその環境に適応した。著者らは、これらの石器はおそらく食肉処理の効率を高めるために使用されたと推測している。
著者らは、これらの発見は、ホモ・エレクトスが極端な環境下で生き延びる適応能力が、以前考えられていたよりもはるかに高かったことを示していると指摘している。また、著者らは、ホモ・エレクトスは、極端な生態系に適応できるのはホモ・サピエンスだけであるというこれまでの仮説に反する結果であり、ホモ・エレクトスは、アフリカやユーラシアのさまざまな環境で生き延びることができる汎用種であった可能性があると結論づけている。
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- Published: 16 January 2025
Mercader, J., Akuku, P., Boivin, N. et al. Homo erectus adapted to steppe-desert climate extremes one million years ago. Commun Earth Environ 6, 1 (2025). https://doi.org/10.1038/s43247-024-01919-1
doi:10.1038/s43247-024-01919-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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