惑星科学:氷衛星エウロパの酸素生成量は考えられていたよりも少ないかもしれない
Nature Astronomy
2024年3月5日
木星の氷衛星エウロパの表面における酸素の総生成量は、これまで仮定されていたよりも少ない可能性があることを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。この知見は、エウロパの海の生命居住可能性に影響を及ぼす。
木星の衛星エウロパには、凍った地殻の下に生命居住可能な条件を持つ内部の液体の海が存在している。エウロパの表面は、放射線に絶えずさらされており、これによって氷の地殻は酸素と水素に分解される。酸素と水素のほとんどは地表から放たれ、宇宙空間に流出するか、残ってエウロパの大気を形成する。これらの大気中のガスやイオンの存在量、ひいては衛星表面でのそれらの生成率は、主にリモートセンシング観測によって推定されており、大きな不確実性がある。
今回、Jamey Szalayらは、2022年9月29日に探査機ジュノーによって行われたエウロパのフライバイ(接近通過)で得られたデータを解析した。ジュノーはこのとき、エウロパの地表から353キロメートル上空を飛行したとみられている。Szalayらは、ジュノーに搭載されたオーロラ分布実験装置(JADE)を用いて、さまざまなピックアップイオン(大気中の中性粒子が高エネルギーの放射線や他の粒子と衝突したときに分裂して生じる荷電粒子)の存在量を得た。Szalayらはこのデータから、毎秒およそ12キログラムの酸素がエウロパの表面で生成されると算出した。これは、毎秒5~1100キログラムの範囲に及ぶ従来のモデルで推測される予想値の下限である。
Szalayらは、この結果が、エウロパの表面の酸素がこれまで考えられていたよりも少ない可能性があることを示しており、このことはエウロパの海における生命居住可能性を支持するには狭い範囲であることを意味すると考えている。
doi:10.1038/s41550-024-02206-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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