化学: ロボット化学者が火星の隕石から酸素を作った
Nature Synthesis
2023年11月13日
ロボット人工知能(AI)化学者を用いることによって、火星の隕石から酸素生成物質が作られたことを報告する論文が、Nature Synthesisに掲載される。今回の研究は、酸素生成の概念を実証するとともに、将来の有人火星探査ミッションに影響を及ぼす可能性がある。
酸素はロケット推進剤や生命維持システムに用いられており、火星での人間活動にとって極めて重要である。従って、将来の有人火星探査ミッションには、酸素の生成が必要になる。こうしたミッションを長期にわたってより費用対効果の高い、単純なものとする方法の1つは、地球から輸送するのではなく、既に火星に存在している資源を用いて酸素を発生させることであろう。火星に水が存在するという新たな証拠と、火星隕石の元素組成の分析結果から、火星の資源を用いて触媒を合成する機会がもたらされる可能性がある。
Jun Jiangらは今回、人間の介入なしに火星の物質から酸素を発生させる触媒を合成できるロボットAI化学者を開発した。Jiangらは、火星由来の隕石もしくは火星に存在することが確認された隕石を5種類選び、ロボットAI化学者がこれらを分析した。ロボットAI化学者は、隕石を化学化合物に変換し、これらの化合物から触媒を合成した後、その酸素生成能を調べることができた。ロボットは、最良の触媒が見つかるまでこの過程を繰り返した。この作業を人間が行うと2000年かかると示唆されている。次に、Jiangらは、シミュレーションされた火星条件下でこの触媒が作用可能であることを示した。
Jiangらは、このロボットAI化学者は、火星の隕石を使って触媒を自動合成することを可能にしており、今回の知見は、将来、火星上で人間が酸素を生成する方法につながる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s44160-023-00424-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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