進化:古代のステロイドが物語る先史時代の生物
Nature
2023年6月8日
新しいタイプのステロイドが古代の岩石から発見されたことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この知見によって、複雑な真核生物の長期にわたる先史時代が確認され、始原的なステロイド分子の存在を予測したノーベル賞受賞者コンラート・ブロッホの正しさが裏付けられた。
真核生物には、20億年という長い歴史があると考えられている。真核生物の化石は少ないため、その代わりとして分子化石の探索が行われている。その一例として、それぞれの種類の真核生物が岩石中に残した可能性があるステロイド代謝産物がある。しかし、このような化石の発見も容易ではない。今回、Jochen Brocksらは、こうしたバイオマーカーが、予想と異なる形で岩石に含まれていたという見解を示している。Brocksらは、プロトステロイドという分子が、原生代中期の堆積岩から発見されたことを報告している。これにより、少なくとも16億~8億年前の水生環境における初期の真核生物の生態的優位性が確認された。
プロトステロイド分子の存在を最初に予測したのがブロッホだった。1994年、ブロッホは、ラノステロールからコレステロールへの長い生合成経路の各段階で生成される短寿命の中間体のそれぞれが、数億年前には、環境に十分に適応した最終産物であり、それぞれの産物がその前駆体に対する進化的な改良だったという仮説を発表した。ただし、ブロッホは、これらの始原的な中間体分子が地質学的記録に残らないため、決して見つからないだろうと結論付けていた。今回のBrocksらの研究は、そうではないことを示しており、プロトステロイドの痕跡が10億年以上も岩石中に残っている場合があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-023-06170-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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