Research Press Release

エネルギー:ヨーロッパでは200万人以上の市民が再生可能エネルギーへの移行を支えている

Scientific Reports

2023年3月3日

ヨーロッパでは、30カ国の200万人以上の市民が、再生可能エネルギーへの移行に向けた取り組みである数千のプロジェクトやイニシアチブに関与し、62億~113億ユーロ(約8680億~1兆5800億円)を投資したことが、分析研究によって明らかになった。この研究で得られた知見は、ヨーロッパの脱炭素化における集団行動の重要な役割を浮き彫りにしている。今回の研究を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。

ヨーロッパのエネルギーシステムは、再生可能エネルギーと脱炭素へ大きく移行しつつある。しかし、この分野における市民主導の取り組み(例えばエネルギー協同組合)の貢献度は、ほとんど分かっていない。

今回の研究で、Valeria Schwanitzたちは、2000年から2021年までのヨーロッパ30カ国における低炭素エネルギーへの移行に向けた市民主導のエネルギーイニシアチブの貢献度を定量化した。評価項目は、イニシアチブの数、関係者の人数、具体的なエネルギープロジェクト、設置された再生可能エネルギー施設、投資された資金の総額だった。

Schwanitzたちの集計によれば、この期間中に記録された市民主導型イニシアチブは1万540件で、その例としてイタリアのボルッタの再生可能エネルギー共同体やスウェーデンのエコビレッジ共同体などがある。これらのイニシアチブでは、地域の建物への風力タービンやソーラーパネル(太陽電池パネル)の設置、共同体内での行動変化や気候変動対策の奨励などの具体的なプロジェクト(2万2830件)が実施された。そして、合計201万600人(ドイツの39万1500人、デンマークの30万6650人を含む)がこれらの活動に参加した。

さらに、市民主導のエネルギー活動への投資額が62億~113億ユーロと算定された。これは、1人当たり最大5700ユーロ(約80万円)の投資に相当する。設置された再生可能エネルギー施設の容量は、7.2~9.9ギガワットで、これらの施設の発電量が、イニシアチブ参加者1人当たり年間8500~1万1700キロワット時と算定された。これは、ヨーロッパの一般的な世帯の電力需要にほぼ対応している。

ヨーロッパにおける再生可能エネルギーへの移行に対する市民の取り組みの貢献度に関して、包括的な統計を構築するには、より多くのデータと報告基準が必要とされるとSchwanitzたちは結論付けている。

doi:10.1038/s41598-023-28504-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度