天体物理学:ブラックホールからの粒子ジェットが明るく輝く仕組み
Nature
2022年11月24日
超大質量ブラックホールからエネルギーを得ている銀河から噴出した明るく輝く粒子ジェットの観測が行われ、その結果が、明るく輝く現象の基盤となる過程を解明する手掛かりとなり、ブラックホール系からの高エネルギー放出の過程について理解を深める上で役立つ可能性のあることが明らかになった。今回の研究について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。
銀河の一種であるブレーザーは、電離した物質の強力なジェットを地球の方向に放出している。ブレーザーが発する光は、ほぼ高エネルギー粒子が作り出したものだが、この粒子が加速されてこれほどの高エネルギーになる仕組みは明らかになっていない。この電離物質のジェットのX線測定ができれば、この問題の答えが得られる可能性がある。しかし、そのような測定ができる機器は、最近まで存在しなかった。
2021年12月に打ち上げられたイメージングX線偏光測定エクスプローラー(IXPE)が、マルカリアン501(Mrk 501)という非常に明るいブレーザーのX線偏光を測定した。今回、Ioannis Liodakisたちは、2022年3月のIXPEによるMrk 501のX線偏光測定(2回)の結果を検討した。Liodakisたちは、これらの測定値を電波波長域と可視波長域の偏光測定データと比較して、Mrk 501が発するジェットに含まれる粒子の初期加速の原因が、ジェットに沿って外向きに伝播した衝撃波だったとする考えを示した。以上の結果は、さまざまな偏光測定値を用いることで、超大質量ブラックホール系の状態を探査できることを実証した。
同時掲載されるLea MarcotulliのNews & Viewによれば、今回の研究の結果が、ブレーザーを解明する研究における転換点になったとされている。さらにMarcotulliは、「これらのジェットのいくつかが、X線偏光測定によって研究できるようになり、この衝撃波が全ての天体物理学的な源に共通しているかどうかを解明できるようになる」と付言している。
doi:10.1038/s41586-022-05338-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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