Research Press Release

健康:世界的な血圧目標を設定することは心血管疾患による死亡を減らす可能性がある

Nature Medicine

2022年7月19日

高血圧と疑われる人の80%が検査を受け、高血圧であることを知った人の80%が治療を受け、治療中の人の80%がガイドラインに沿った血圧レベルになるという高血圧対策の世界的目標がもし達成できれば、2022〜2050年に心血管疾患による死亡者数を、世界全体で7600万〜1億3000万人程度減らせる可能性があることが報告された。

高血圧は、心血管疾患(CVD)やCVD関連死の主要なリスク因子だが、修正することが可能である。費用対効果の高い予防方法や管理方法が存在するが、それを国家規模、あるいは世界規模へと拡大することが政治的優先事項とはなっていない国が多い。

S Pickersgillたちは、各国が国の高血圧対策として「80-80-80目標」を導入することを提案している。80-80-80目標とは、高血圧と思われる人の80%が検査を受けて診断結果を知り、自身が高血圧だと知った人の80%が治療薬を処方され、こうして治療中の人の80%がガイドラインで推奨された血圧レベルを達成するというものである。著者たちは、182か国について、高血圧管理のこの目標に沿った3通りのシナリオ、つまり「現状維持」(診断や治療の規模拡大を図るような追加の取り組みはしない)、「進展」(歴史的に管理をうまく行ってきた国にあたる)、「強く推進」(歴史的に管理をうまく行ってきた国を上回る速さで対策が進展する)を想定して、これらが与える影響をモデル化した。「進展」と「強く推進」のシナリオの場合、あらゆる死因による死亡数が2050年までにそれぞれ4%(7600万人)あるいは7%(1億3000万人)減らせる可能性があると著者たちは推定している。この目標から最も大きな利益を実際に受けるのは、現時点で高血圧対策の普及率の低い最貧国と考えられる。「強く推進」のシナリオでは、ほとんどの国が2040年までに80-80-80目標を達成できる可能性がある。

著者たちは、世界全体で高血圧対策の80-80-80目標を達成できれば、これだけで今後数十年の世界の公衆衛生上、最も重要な成果の1つとなる可能性があると結論しており、さらに、このような戦略の実施は、CVDの転帰に見られる世界的な不平等を大きく是正するだろうと述べている。

doi:10.1038/s41591-022-01890-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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