Research Press Release
体液平衡の異常がヒトの生殖障害に関係する
Nature Medicine
2011年10月17日
体液平衡にかかわるプロテインキナーゼの制御の不調が、ヒトの2種類の異なったタイプの生殖障害に結びつくことが明らかになった。キナーゼは薬剤の標的になりうるので、今回の知見を役立てれば、将来、このような生殖障害を薬によって防げる日が来るかもしれない。
不妊や反復流産に悩む女性は多い。この2つは異なった形の生殖障害だが、J Brosensたちは、同一のキナーゼSGK1の発現の調節異常が、子宮の内側を覆う子宮内膜の2つの異なった細胞区画において起こると、これら2種類の障害の発症につながることを明らかにした。原因不明の不妊に悩む女性の子宮内膜の内腔上皮ではSGK1の発現が上昇しているが、流産を繰り返す女性の場合、子宮内膜間質でのSGK1の発現が低下していることがわかった。
SGK1の発現の変化とこれらの生殖障害とを結びつけている仕組みは、両者で違っているらしい。Brosensは、子宮内膜表面の上皮のSGK1活性が上昇すると、着床遺伝子の発現が選択的に阻害され、局所的に体液環境が乱れ、不妊につながることを発見した。一方、妊娠中に子宮内膜のSGK1活性が低下すると、盛んな組織再編成によって生じる酸化ストレスシグナルからの防御がうまく行えなくなり、胎児の喪失を引き起こす。
doi:10.1038/nm.2498
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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