Research Press Release

環境:ヨーロッパの浮遊マイクロプラスチックが北極海に集積する可能性

Scientific Reports

2022年3月18日

ヨーロッパの河川から放出された浮遊マイクロプラスチックが、北極海、ノルディック海、バフィン湾の一部海域に集積する可能性を示唆した論文が、Scientific Reports に掲載される。

これまでの研究で、北極海全域にマイクロプラスチック粒子が高濃度で集積していることが報告されているが、このマイクロプラスチックの発生源と集積域は分かっていない。

今回、Mats Huserbråtenたちは、2007年~2017年の海流モデルと浮遊マイクロプラスチックの動きのシミュレーションを組み合わせて研究を行った。具体的には、北ヨーロッパと北極域の21の主要河川からの毎日のマイクロプラスチックの流出のシミュレーションを10年分行った上で、数十年間のマイクロプラスチックの動きをモデル化した。そして、このモデルの結果を、2017年5月~2018年8月にノルウェー西岸沖の17地点で採取した海水試料121点に基づいた浮遊マイクロプラスチックの分布と比較した。

このシミュレーションでは、河川から放出されたマイクロプラスチック粒子の大部分が、2つの主要な経路で漂流した。65%は、ロシアの北に位置するラプテフ海に向かってノルウェー沿岸を漂流し、北極海に運ばれて、北極を横断し、グリーンランドの東に位置するフラム海峡から北極海を出た。30%は、ノルウェー沿岸を漂流してからフラム海峡を経由して南下し、グリーンランドの東岸と南岸に沿って移動し、さらにカナダの北東岸に沿って南下した。Huserbråtenたちは、20年間のシミュレーションを経て、浮遊マイクロプラスチックが集積する明確な水域として、ノルディック海、北極海のナンセン海盆、北極海と北ロシアの間に位置するバレンツ海とラプテフ海、そしてグリーンランドとカナダの間に位置するバフィン湾を特定した。また、海水試料の分析から、浮遊マイクロプラスチックの分布が、10年間のマイクロプラスチック放出のシミュレーションとその後のノルディック海、北極海とフラム海峡を経由した循環に基づいたHuserbråtenたちのモデルによる予測と矛盾しないことが判明した。このことは、浮遊マイクロプラスチックが10年間以上も北極域で循環していた可能性を示している。

Huserbråtenたちは、浮遊マイクロプラスチックの循環が北極の生態系の健全性に影響を及ぼすかもしれないと考えており、今回の知見は、プラスチック廃棄物の管理を改善することの重要性を強く示していると付言している。

doi:10.1038/s41598-022-07080-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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