Research Press Release
乳がんの治療抵抗性を予測する
Nature Chemical Biology
2011年9月26日
がん治療でPI3K阻害剤に対する薬物耐性をもたらすと考えられるメカニズムが、Nature Chemical Biology(電子版)の論文で発表される。この知見により、耐性の出現前に対処して患者の治療転帰を改善する戦略が開発される可能性がある。
PI3キナーゼ(PI3K)をコードする遺伝子の変異は乳がんの25%以上で発生し、組織の悪性増殖の一因となっている。PI3Kの阻害剤は臨床試験が進められているが、この治療法では、その有望性とは裏腹に、抵抗性が出現する場合が多い。
S Nijmanたちは、化学遺伝学的方法により、乳がん細胞のNOTCH1経路およびc-MYC遺伝子の活性化がPI3K阻害剤に対する耐性を与えることを予測した。これまで、乳がんではNOTCH経路とPI3Kとが結びつけられたことはなかった。治療中にこの種の腫瘍に生ずる変化の種類を理解することは、PI3K阻害剤に対する耐性が出現する前に対処する優れた戦略の開発に寄与する、と研究チームは考えている。
doi:10.1038/nchembio.695
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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