バイオテクノロジー:プログラム可能なインクを用いた生体材料の3Dプリンティング
Nature Communications
2021年11月24日
微生物インクを用いて、機能性とプログラム可能性という属性を有する3D材料のプリンティングを行うという概念実証研究について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究では、この技術の使用可能性、例えば環境中に存在する有毒化学物質ビスフェノールA(BPA)の隔離が実証された。
他のポリマーや添加剤を加えずに微生物から直接プリンタブルインクを作製できると、従来の材料を利用できない状況での製造に新たな可能性が開かれ、周囲の環境を感知して反応する材料の開発も可能になる。こうした材料の3Dプリンティングができるようになれば、特定の用途に合わせたカスタマイズや改良が可能になる。生細胞でできた微生物インクは、こうしたことを実現する可能性のある媒質であるが、そのためには、望ましい材料特性と細胞生存性を両立させる必要がある。
今回、Neel Joshiたちは、遺伝子組み換えによってナノファイバーを生成できるようになった大腸菌から作られた高度な微生物インクを発表した。このナノファイバーは、濃縮でき、3D構造のプリンティングに使用できる。次に、Joshiたちは、このインクと特定の課題を実行するように設計された他の遺伝子組み換え微生物を混ぜてできたヒドロゲルが、機能性を獲得したことを明らかにした。Joshiたちは、このヒドロゲルを用いて、化学刺激に応答して抗がん剤アズリンを放出する材料を作製し、有毒化学物質BPAが環境中に存在する場合にBPAを隔離する材料を設計できた。
今回の知見は、このようにバイオテクノロジーや生物医学に用いる機能性材料のプリンティング技術の可能性を実証している。Joshiたちは、自分たちの研究が宇宙空間での構造の構築に重要な意味を持つ可能性があるが、今後のカスタマイズを探究するためにはさらなる研究が必要だと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-26791-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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