計算生物学:機械学習のアプローチによる新しいデザイナードラッグの特定
Nature Machine Intelligence
2021年11月16日
「デザイナードラッグ」や「危険ドラッグ」と呼ばれる未知の新しい向精神薬の化学構造を質量スペクトルのみから決定することのできる、自動化された生成的な機械学習手法について報告する論文が、Nature Machine Intelligence に掲載される。これらの構造に関する知識は、法医学研究所がデザイナードラッグの疑いのある物質をより迅速に特定するのに役立つだろう。
毎年、多くの新しい向精神薬が違法薬物市場に登場している。これらの物質は既知の違法薬物と同様の向精神作用をもたらすが、化学的に異なる物質になるように合成されているため、既存の薬物規制を擦り抜けてしまうだけでなく、検出することさえ不可能である。法医学研究所では、質量分析を使用して、押収された錠剤や粉末に含まれる既知のデザイナードラッグを特定している。しかし、完全に新しいデザイナードラッグになると、専門の化学者が、他の実験手法も用いながら、数週間から数か月がかりで構造を特定するのが普通である。
今回、Michael Skinniderたちは、世界中の法医学研究所からクラウドソーシングした機密データを用いて機械学習モデルを訓練し、最近のデザイナードラッグに似た構造と特性を持つ分子を生成した。続いて、このモデルにより、新しい向精神薬となる可能性のある10億種類の構造のデータベースを作成した。訓練後に収集した新しいデータでモデルのテストを行ったところ、この手法では質量スペクトルのみから未知のデザイナードラッグの化学構造を決定できることが明らかになった。未知のデザイナードラッグの構造を正しく決定できなかった場合も、モデルはそれに非常によく似た構造を提案していた。
Skinniderたちは、他のデータセットで訓練した同様の生成的アプローチは、新しい運動能力強化薬や環境汚染物質の特定など、他の専門領域における未知の分子構造の特定にも役立つだろうと結論付けている。
doi:10.1038/s42256-021-00407-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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