Research Press Release
神経科学:非侵襲性の個別化した脳刺激は強迫行動を減少させる可能性がある
Nature Medicine
2021年1月19日
学習と報酬選択行動を制御する脳ネットワークの活動パターンに合わせて調整した高周波の電気刺激が、ヒトの強迫行動を最長3か月間にわたって減少させる可能性が示された。この知見は、強迫行動や関連疾患の治療に、非侵襲性で脳回路を対象とする個別化した治療法が有用である可能性をはっきりと示している。
強迫性障害は一般集団で患者数が多く、患者やその周囲の人にかなりの苦痛をもたらすことがあるにもかかわらず、効果的な治療選択肢はわずかしかない。これまでの研究から、強迫行動は、強化学習の際の報酬に応じて起こる過剰な習慣学習に関連があるとされている。
今回R Reinhartたちは、非侵襲的な方法を用いて、強化学習課題に参加した124人のボランティアの脳活動パターンを測定した。そして、高周波の電流で眼窩前頭皮質の特定の脳ネットワークを刺激したところ、この手法によって、報酬に誘導された選択行動は効果的に調節できるが、罰に誘導された選択行動では影響が見られないことが明らかになった。また、5日間の長期刺激によって強迫行動が最長で3か月減少し、最も重い症状の患者で最も大幅な改善が見られることも示された。
これらの知見は、脳に対するこの新しい形の個別化調節が、過食症、強迫性賭博、買い物依存といった行動で悩んでいる人々に長期的な改善をもたらすのに有効である可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41591-020-01173-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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