創薬:耐性機構を克服する新しい抗生物質の構築
Nature
2020年9月24日
抗生物質耐性を克服できる可能性のある新しい抗生物質を作り出すための合成法を記述した論文が、今週、Nature に掲載される。この方法で作製された化合物の1つは、細菌感染のマウスモデルが保有する耐性細菌株に対して有効なことが明らかになった。
臨床で使用されている抗生物質の大部分は天然物に由来しており、共進化により生じた耐性機構の影響を受ける。例えば、ストレプトグラミンA群という抗生物質ファミリーは、抗生物質を不活性化させるバージニアマイシンアセチルトランスフェラーゼ(Vat)酵素を発現する細菌株には効果がない。今回、Ian Seipleらの研究チームは、Vat酵素が付与する耐性を克服できる合成ストレプトグラミンA群を作製する方法について報告している。
研究室で抗生物質の開発をゼロから始める場合、抗生物質のような複雑な分子には高度にカスタマイズされた複数の連鎖反応が必要なため、開発の成功までに相当な時間を要することがある。今回、Ian Seipleたちは、モジュール的手法で開発時間の短縮を図った。彼らは、天然に存在するストレプトグラミンA群の抗生物質を基本骨格に用いて、交換可能な分子構成要素(細菌の細胞成分に結合できるが、Vat酵素の結合に対する感受性が低い)を付加して、ストレプトグラミンA群の類似体(62種)を生成した。これらの化合物の1つは、黄色ブドウ球菌のストレプトグラミン耐性株に対して活性を示し、細菌感染のマウスモデルにおいて有効性を示した。著者たちは、この方法でストレプトグラミン系抗生物質の臨床寿命を延ばせるという見解を示している。また、同時掲載されるDaniel BlairとMartin BurkeによるNews & Viewsでは、今回の研究が、強力な抗生物質活性を維持しながらVat媒介耐性を緩和するストレプトグラミンA群抗生物質の開発に役立つという考えが示されている。
doi:10.1038/s41586-020-2761-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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