生体力学:二足歩行のために作られたヒトの足
Nature
2020年2月27日
ヒトの足に備わった2つの独特なアーチによって二足歩行と二足走行が可能になったという結論を示した論文が、今週Nature に掲載される。この新知見は、ヒトの足の進化を解明するための新たな手掛かりであり、ロボットの足の設計を改良するためにも役立つ可能性がある。
ヒトの足は、剛性が高く、アーチを備えているが、これらの特徴は、効率的な直立歩行に必須である。これに対して、他の霊長類(チンパンジー、ゴリラ、マカクなど)は、比較的柔軟性の高い扁平な足を持っている。ヒトの足の構造から高い剛性がどのように生じるのか、という点について研究者は議論を重ねてきた。先行研究の大部分は、踵から母指球に至る足部内側縦アーチ(MLA)に着目していたが、足を横断する足根横アーチ(TTA)の役割を検討していなかった。
今回、Madhusudhan Venkadesanたちの研究チームは、足の剛性がTTAによって生じているのかどうかを調べるため、ヒトの足について曲げ試験を行った。その結果、TTAが足の剛性の40%以上に関係していることが明らかになった。紙を横方向に折りたたむと、縦の剛性が高くなるように、TTAが足において同じような役割を果たしていると考えられるのだ。
また、Venkadesanたちは、絶滅したヒト族種を含む霊長類全体におけるTTAの進化についても調べた。その結果、MLAとTTAが完全に発達しているのはホモ属だけであることが分かった。この知見は、2つの隣接したアーチの組み合わせによって足の縦方向の剛性が生み出されていることを示唆している。さらに、ヒトの足の進化には、いくつかの段階があり、それによって効率的な歩行と走行が可能になったことも分かった。
同時掲載のNews & Views論文(Glen Lichtwark、Luke Kelly共著)では、これと同じ機構を直接応用して、ヒトの足を模倣することを目指す義肢や脚付きロボットの設計を改良できる可能性が指摘されている。
doi:10.1038/s41586-020-2053-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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