【気候科学】アイススラブが成長するとグリーンランド氷床の融解水流出が増える
Nature
2019年9月19日
2001年以降、グリーンランド氷床で融解水流出が起こっている部分の総面積が、アイススラブ(厚さが数メートルの透水性が低い氷)のために約26%増加したことを報告する論文が、今週掲載される。アイススラブは成長を続けているため、2100年には、融解水流出が起こっている面積の増加が全球的な海面上昇に寄与する度合いが、温室効果ガス排出シナリオによって7~74ミリメートルとなる可能性のあることが今回の研究で示唆されている。
アイススラブとは、既存の氷の層の間で融解水が再凍結し、2年以上をかけて形成される(厚さ1メートル以上の)氷の層のことで、全長が数十キロメートルにわたることもある。透水性が低いため、氷床の表面の融解水は(海面上昇の緩衝機構として機能することのある)多孔質の雪に再吸収されることはない。
今回、Michael MacFerrinたちの研究グループは、アイススラブの形成を定量化することに取り組み、(温室効果ガス排出量が2040年までにピークに達する)中排出シナリオと(温室効果ガス排出量が21世紀の終わりまで増加し続ける)高排出シナリオの下でのアイススラブの成長とそれが融解水流出に及ぼす影響の可能性を予測した。MacFerrinたちは、2013年末の時点で、アイススラブに覆われた地域の面積が、1990年以前のグリーンランドで融解水流出が起こっていた面積より62100~78900平方キロメートル広かったことを明らかにした。また、MacFerrinたちのモデルでは、いずれのシナリオによってもアイススラブに覆われる地域の面積が2050年にほぼ倍増し、2100年には、アイススラブに覆われる地域からの融解水流出量が、アイススラブのないシナリオによる融解水流出量の推定値の2倍になると予測されている。
doi:10.1038/s41586-019-1550-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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