肢の骨に隠れている血管が判明
Nature Metabolism
2019年1月22日
マウスの長骨の内部にある血管網を初めて観察したことを報告する論文が、今週掲載される。これらの小さな毛細血管は骨を通り抜けて、骨髄と広範な循環系とを結び付けている。
血液が長骨(脛骨など)に入る際、骨端の動脈あるいは骨幹に沿った少数の血管を通して骨髄を通り抜け、反対の端から出ると考えられてきた。しかしこの経路では、骨髄への緊急薬の点滴が、体の他の部分へと急速に広がる理由は説明できない。
今回Matthias Gunzerたちの研究グループは、マウスの脛骨を画像化し、骨の硬い外殻を何百もの微細な毛細血管が通り抜けているのを発見した。TCV(trans-cortical vessel)と命名されたこれらの血管は、マウスの骨の循環系の主要な構成要素らしい。Gunzerたちの計算によれば、骨を通り抜ける血液の大部分は、このTCVを経由しているという。さらにGunzerたちは、ヒトの長骨に、もっと太いが、よく似た血管があることを見いだした。ただし、これらがやはりTCVであるかは、まだ確認されていない。
またGunzerたちは、免疫細胞がTCVを通って移動していることも直接観察しており、TCVは骨髄と炎症部位とを結ぶ近道となっている可能性がある。慢性関節炎のマウスモデルでは、新しいTCVが数週間以内に生じることが分かった。今後の研究でTCVと炎症性疾患との間に直接的な関連があることがはっきりすれば、今回の知見は、TCVを介した血流や細胞の移動を調節することによって骨炎や組織傷害を治す、新しい治療法の開発に役立つかもしれない。
doi:10.1038/s42255-018-0016-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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