Research Press Release

幹細胞治療で、サルの心不全が改善

Nature Biotechnology

2018年7月3日

心不全のサルへのヒト心筋細胞の移植により、損傷した心臓の拍出機能を大幅に回復できることを報告する論文が、今週掲載される。サルで効果が実証されたことで、ヒト胚性幹(ES)細胞を利用したこの治療法は、ヒトでの臨床試験に向けて一歩前進したと言える。

心臓発作を治療しないまま放置すると、心臓への血流の阻害によって心筋細胞が死に、瘢痕形成や心不全につながり、体の需要に見合うだけの十分な血液を送り出せなくなる。心不全を回復させるさまざまな新しい方法は、マウスではうまく働くことが分かったが、ヒトの臨床試験では失敗が続いていた。より大型の動物、例えばサルのように生理的にもっとヒトに近い動物で調べれば、その治療法がヒトに有効かどうかを予測しやすいだろう。

Charles Murryたちは、サルに心臓発作を起こさせて心臓の拍出機能を40%以上低下させた後、このサルの心臓にヒトES細胞由来の心筋細胞を約7億5000万個注入した。この移植細胞は、損傷した心臓内にかなりの量の新しい筋肉を形成した。4週間後、治療を受けたサルでは、心臓発作で失われた拍出機能が3分の1程度回復した。12週間経過観察した2頭では、拍出機能は3分の2以上に回復した。これらの結果が今後の臨床試験で再現されれば、この方法は心不全の有効な再生治療法になるかもしれない。

doi:10.1038/nbt.4162

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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