【環境】ヨーロッパ全土における洪水の影響の推移
Nature Communications
2018年5月30日
洪水によって水浸しになった地域の面積と被害者の数は、1870年以降、ヨーロッパ全土で増加したが、それに伴う金銭的損失と死者数は減少したことを報告する論文が、今週掲載される。
今回、Dominik Paprotnyたちの研究グループは、1870~2016年のデータを集めたHistorical Analysis of Natural Hazards in Europe(HANZE;ヨーロッパにおける自然災害の歴史的分析)のデータベースを解析して、1870年以降の1564件の洪水事象とそれらの人命および経済への影響を調べた。その結果、ヨーロッパ全土で洪水による浸水面積が増加したことが分かった。ところが、この期間中にヨーロッパの総人口が著しく増加し(130%増)、都市部の面積もさらに著しく増加した(1000%増)にもかかわらず、洪水による死者数は1950年までゆるやかに減少(年1.4%)しており、その後の1950~2016年は年4.3%も減少していた。Paprotnyたちは、金銭的損失についても類似の傾向を報告しており、ヨーロッパ全土における富は全般的に2000%増加していたが、洪水による金銭的損失は減少しており、減少が最も顕著だったのは1950~2016年の年2.6%の減少だった。
Paprotnyたちは、こうした傾向はヨーロッパ全体のものであり、国ごとにばらつきがある点に注意を要するとしている。また、小規模な洪水は十分に報告されない傾向があり、局所的な金銭的損失の傾向に影響する可能性がある。
同時掲載のCommentでは、Brenden Jongmanが、洪水を管理し、その経済的影響を軽減するためには、洪水防止インフラ、自然に基づくソリューション、リスクファイナンシング(自然災害の被害に備えた資金調達)を組み合わせた有効な適応戦略が必要だと主張している。
doi:10.1038/s41467-018-04253-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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