Research Press Release

【進化】どうしてヒトの脳はこんなに大きくなったのか

Nature

2018年5月24日

ヒトの大きな脳が進化した主たる要因が生態学的課題であったとする論文が、今週掲載される。この研究は、ヒトの進化に関する主要な論争への情報提供の一助となる。

ヒトの脳が進化によって異常に大きくなった理由を巡る論争は、研究者の間で数十年間も続いている。一定数の学説が提起されており、例えば、複雑さを増す社会生活に対応していく上で役立つように脳が大型化したとする「社会的な脳」仮説、肉食によって大きな脳が進化し、そのために消化管が本来の大きさより小さくなったとする「不経済組織」仮説などがある。ところが、これらの学説は相関データに依存しており、原因と影響を分けて考えることができないという根本的な問題を抱えている。

今回、Mauricio Gonzalez-ForeroとAndy Gardnerが報告した新しい予測モデルによれば、ヒトの脳の大きさは、いくつかの異なる要因に応答して進化したものであり、それらの要因のうちの60%が生態学的課題に、30%が協力行動に、10%が集団間の競争に関連しており、個人間の競争は比較的重要でないとされている。この新知見は、社会的複雑性がヒトの大型の脳が進化した原因ではなく結果である可能性が高く、人間性の本質が社会的駆け引きではなく、生態学的課題の解決と文化の蓄積である可能性が高いとする点で興味深い。

doi:10.1038/s41586-018-0127-x

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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