Research Press Release

外傷性脳損傷に対する免疫応答

Nature Immunology

2018年4月17日

軽度の外傷性脳損傷による障害を修復するために、免疫系が2段階で作用することが、マウスでの研究によって示唆された。

脳損傷の中で最も多く見られるのが軽度外傷性脳損傷(mTBI)であり、mTBI患者の約50%は髄膜(脳の表面を覆う膜)に障害が生じるが、これらの損傷がどのように治癒するのかはほとんど知られておらず、現在のところ臨床利用が認められた治療法はない。

Dorian McGavernたちは、マウスモデルを使ってmTBIに対する免疫細胞の応答を研究し、受傷後4日の間に、創傷部位中の死細胞を除去する免疫細胞が関わる一次的な炎症応答が起こることを明らかにした。続いて、二次的な創傷治癒応答が観察され、他の免疫細胞が創傷の外周に集まり、細胞内部に入って、新しい血管の成長を促進し、凝血塊を除去した。この二次応答は1~3週間続いた。また、一次炎症応答の段階で再度損傷が起こると、回復過程が阻害され、永続的な障害につながることも分かった。

著者たちは、2段階過程が再損傷によって中断し、髄膜の血管修復に失敗することが、mTBI患者の約15%に生じる脳震盪後症候群の原因かもしれないと述べている。

doi:10.1038/s41590-018-0086-2

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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