【心理学】「感じの悪い」笑顔を見るとストレスがたまる
Scientific Reports
2018年3月2日
他者の評価を受ける状況に置かれた人がその他者の笑顔を見た時、笑顔をどのように受け取るのかによって身体的ストレス応答が増えたり減ったりすることが、90名の男子学部学生が参加した研究で明らかになった。この研究について報告する論文が、今週掲載される。
他者の評価を受ける状況(例えば、スピーチをする場面)において、「よかった/よくなかった」といった言語的なフィードバックのきっかけが、視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸;人体の極めて重要なストレス応答系)を活性化させることが知られている。しかし、HPA軸が非言語的なフィードバックのきっかけに応答するかどうかを調べた研究は数少ない。
今回、Jared Martinたちの研究グループは、ストレスのかかる社会的状況に置かれた人が、笑顔を評価的なフィードバックと認識した時に、さまざまな社会的機能を有する笑顔が、その社会的機能に応じてHPA軸の活性に異なった影響を及ぼすことを実証した。今回の研究では、笑顔を、(1)行動を強化する「報酬」の笑顔、(2)脅威がなく社会的な絆を促進または維持する「親和」の笑顔、(3)社会的地位に反し不承認を示唆する「優越」の笑顔のいずれかとして受け取った被験者の唾液に含まれるコルチゾールの濃度を、HPA軸の活性の指標として用いて比較した。その結果、笑顔を「優越」の笑顔として受け取った者は、他の2種の笑顔として受け取った者に比べて、唾液中コルチゾール濃度がより高く、心拍数が多いことが明らかになった。また、ストレスのかかる状況が消失しコルチゾール濃度が基準値に戻るまでの時間は、「優越」の笑顔を認識する者の方が長かった。これらの身体的応答は、負の言語的フィードバックに対する反応と類似している。
また、Martinたちは、心拍変動(心拍間時間の変動)の大きい者の方が、種類の異なる笑顔に対する応答に微妙な差が出やすいことも明らかにした。心拍変動は、顔認識の正確さと関連付けられている。
今回の研究によって得られた知見は、笑顔が非言語的な正のフィードバックであるとは限らないこと、そして、笑顔を認識する者の生理的反応に作用することによって笑顔が社会的相互作用に影響を及ぼす可能性のあることを示す、新たな証拠となっている。Martinたちは、今回の研究におけるサンプル数が少ない上に被験者が男性だけだったため、新知見を一般化するには制限があることに注意する必要があると述べている。同じ種類の笑顔に対する応答に男女差があるのかどうかや、より明白に否定的な表情に対する生理的影響を検証するためには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41598-018-21536-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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