【動物行動学】汚れた衣類に集まるトコジラミ
Scientific Reports
2017年9月28日
トコジラミ(Cimex lectularius)は、ヒト宿主がいないと、汚れた衣類に引き寄せられることが明らかになった。今回の研究では、旅先で着用後の衣類を就寝スペースに放置すると、トコジラミの分散が促進される可能性があるという考えが示されている。研究の詳細を報告する論文が、今週掲載される。
近年、ごく普通のトコジラミが世界的に勢いを盛り返しているが、その原因の1つが、格安航空会社を使った海外旅行の増加だとされている。そして、トコジラミの長距離分散を促進する機構の1つとして、トコジラミが衣類や旅行かばんに集まってくることが挙がっている。
今回、William Hentleyたちの研究グループは、温度制御された2つの全く同じ部屋にそれぞれトコジラミを放ち、4個のトートバッグ(汚れた衣類の入ったトートバッグが2個、清潔な衣服の入ったトートバッグが2個)を置いて実験を行った。毎回の実験では、いずれか1つの部屋で、ヒトが室内にいて呼吸している状態を模倣して二酸化炭素の濃度を上昇させた。その結果、ヒト宿主がいない場合には、トコジラミが汚れた衣類の入ったトートバッグに集まる確率が清潔な衣服の入ったトートバッグの2倍に達することがわかった。また、室内の二酸化炭素の濃度を上昇させると、トコジラミが隠れ家のトートバッグから離れて宿主を探索する行動を始める確率が上昇することも明らかになった。
Hentleyたちは、汚れた衣類に残されたヒトの体臭が宿主探索行動の誘発物になっていると主張している。その結果として、トコジラミが湧いている部屋では、開けっ放しのスーツケースや床に放置された汚れた衣類にトコジラミが集まってくると考えられている。
doi:10.1038/s41598-017-11850-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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