【がん】マウスの色素沈着を活発にして黒色腫を防ぐ
Nature
2017年9月7日
色素沈着過程に関係するタンパク質の修飾によってマウスにおける黒色腫の発生を防げることが明らかになった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
メラノコルチン1受容体(MC1R)は、ヒトとマウスの皮膚の色素沈着に重要な役割を担っていることが知られている。一方、MC1RのRHCバリアントを持つ人、例えば、赤毛の髪の人、色白の人、日焼けしにくい人は、色素沈着を誘導する能力が低いため、黒色腫を発症するリスクが高い。
今回、Rutao Cuiたちの研究グループは、いくつかの低分子のスクリーニングを行って、パルミチン酸によってMC1RのRHCバリアントの活性が変化することを明らかにした。そして、培養細胞を用いた一連の実験では、MC1Rに対するタンパク質のパルミトイル化(パルミチン酸の付加)がMC1Rシグナル伝達の活性化に必須で、このシグナル伝達が究極的に色素沈着を増加させることが明らかになった。また、Cuiたちは、MC1RのRHCバリアントを有するマウスの場合に、パルミトイル化の促進によってMC1RのRHCバリアントの異常が救済され、色素沈着が増加し、黒色腫の発症が防止されることも報告している。Cuiたちは、タンパク質-アシルトランスフェラーゼZDHHC13の発現増加を誘導し、または脱パルミトイル化を阻害してMC1Rのパルミトイル化を回復させることが、将来的な黒色腫予防の臨床的戦略候補の基盤となる可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/nature23887
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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