【生物工学】女性の月経周期を実験室内で再現する
Nature Communications
2017年3月29日
「臓器オンチップ」技術を用いて、ヒトの生殖器官の28日の月経周期を模倣したという報告が、今週掲載される。この研究では、生殖器官のさまざまな組織と他の生体組織の約1カ月間の共培養に成功し、通常の月経周期において見られるように生殖器官の組織からホルモンが分泌されることが初めて実証された。今回発表される新技術は、創薬研究のためのプラットフォームになる可能性がある。
女性の生殖器官は、さまざまな組織(卵巣、卵管、子宮、子宮頸部)によって構成されており、それぞれに一定の機能(例えば、性ホルモンの調節)がある。こうした生殖器官の組織とホルモンによる制御の関係は複雑であるために、実験室内で模倣することは難題だった。
今回、Teresa Woodruffの研究チームは、これまでより長期間にわたって5種類の生体組織を維持できる微小流体プラットフォームを作製した。このデバイスでは、加圧された生体組織の上を液体が流れるようにして、体内で起こる現象を模倣した。Woodruffたちは、このデバイスの中でマウスの卵巣とヒトの卵管、子宮内膜(子宮の内壁を覆う膜)、子宮頸部、肝臓の各組織を28日にわたって共培養した。その結果、月経周期において観察されるように卵胞期末期にエストロゲン値がピークに達し、プロゲステロン値が抑制されていた。
今のところ、このプラットフォームは、ホルモン分泌しか模倣できず、(子を正常に出産するための)生殖器官の機能全体を反映しておらず、免疫系など他の要因による影響も明らかになっていないという限界がある。しかし、これは、生殖組織の機能の解明に向けた重要な一歩であり、創薬(避妊薬や不妊治療)や毒性試験の今後の発展に道を開く可能性がある。
doi:10.1038/ncomms14584
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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