【遺伝】発達障害に関連する遺伝子が新たに同定される
Nature
2017年1月26日
診断未確定の重度発達障害の患者4,000人以上を対象としてエキソーム(DNAのタンパク質コード領域)の配列解読と解析が行われ、こうした発達障害の発症リスクの基盤となる14個の遺伝子が新たに同定された。この新知見が、今週掲載される論文で報告されており、発達障害の診断の改善に役立ち、治療法の開発にも役立つ可能性がある。
新生児の約2~5%は、重い先天異常を有し、又は小児期に重度の神経発達障害を示している。そのような疾患の根底にはさまざまな機構があるが、発生上重要な遺伝子の有害な遺伝的変異が大きく寄与している。しかし、個々の発達障害は発生頻度が低く、症状にばらつきがあるため、その遺伝子診断は、依然として困難である。
今回、Matthew Hurles、Jeremy McRaeたちの研究チームは、発達障害の診断を目的とした遺伝子研究プロジェクトDeciphering Developmental Disorders Studyの一環として、診断未確定の重度発達障害の患者4,293人とその家族を調べた。そして、Hurlesたちは、これまでに発表されている同じ疾患の患者3,287人の解析結果を組み合わせて、両親のいずれにも存在しない有害なde novo変異が含まれている可能性が特に高い94個の遺伝子を同定した。これらの遺伝子のうちの14個については、これまでに発達障害との関係を認めた研究報告はなかった。Hurlesたちは、研究対象となった者の42%がDNAのタンパク質コード領域に病原性変異を有しており、その結果として遺伝子機能の破壊または変化が起こっていると推論している。また、Hurlesたちは、de novo変異を原因とする発達障害を発症する子どもが、両親の年齢に応じて213人中1人から448人中1人という割合で生まれているという計算結果を示している。これは、世界全体で年間約400,000人の新生児に相当する。
doi:10.1038/nature21062
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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