Research Press Release

睡眠中の記憶強化

Nature Neuroscience

2011年1月24日

新しく学習した記憶を睡眠中に再活性化することによって、記憶痕跡が強化されることがNature Neuroscience(電子版)の論文で報告されている。この発見は、心的外傷後ストレス症候群などの疾患の治療に臨床的意義をもつ。

以前の研究から、新しく生成した記憶は、学習後の覚醒した状態ですぐに再活性化すると、記憶痕跡が実際には不安定になり、記憶の頑強性が損なわれることが明らかにされている。

B Raschらは、被験者にグリッド内の物体の位置を覚える空間記憶課題を行わせ、同時にある匂いを提示した。被験者にこの匂いと物体の関連を記憶させた後、被験者を、睡眠をとるグループと、同じ時間起きたままのグループに分けた。覚醒または徐波睡眠中の被験者に学習課題の匂いを再び提示したところ、おそらく記憶の再活性化が引き起こされたらしい。睡眠中に再活性化が起こると記憶は後でよく定着し、覚醒中だと定着しにくいことがわかった。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)も使用し、覚醒中に匂いによって記憶が再活性化すると、睡眠中にみられる脳の活動とは異なるパターンが見られることが示された。

この発見により、記憶の再活性化は睡眠中に起こるか覚醒中に起こるかによって正反対の効果をもつことが示唆される。

doi:10.1038/nn.2744

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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