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惑星科学:火星における変動する水の存在量の解明

Nature

2025年7月3日

Planetary science: Explaining fluctuating water availability on Mars

Nature

火星の気候進化モデルが、赤い惑星(Red Planet)におけるこれまでの水の存在量の変動を説明している。このモデルを報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載され、堆積岩中に最近発見された炭酸塩鉱物(二酸化炭素循環の指標)に基づいている。本研究は、火星が太陽の明るさ、軌道変動、炭酸塩の形成、および大気中の二酸化炭素濃度によって調節された砂漠のような気候を持ち、断続的に液体の水のオアシスが存在していた可能性を示唆している。

火星の表面に水が存在していたことは示唆されてきたが、その水がどのように失われたかは不明であった。気候条件を理解することは重要である:惑星の気候を調節する主要因の一つは二酸化炭素であり、これは炭酸塩として岩石に貯蔵される。火星の軌道上から観測された炭酸塩はごく少量であったが、最近、火星探査ローバー「キュリオシティー」(Curiosity rover)がゲール・クレーター(Gale Crater)で隠れた炭酸塩を発見した。

Edwin Kiteら(シカゴ大学〔米国〕)は、ゲール・クレーターにおける炭酸塩の含有量が火星全体を反映していると仮定し、過去35億年間にわたる火星の気候進化をモデル化した。その結果、火星における炭酸塩の形成が気候の進化に重要な役割を果たした可能性が示唆された。モデルでは、太陽の明るさが増加すると水の存在量が増加し、これが炭酸塩の形成を引き起こしている。炭酸塩が形成されると、大気中の炭素を除去し、温室効果を弱め、惑星を冷たく乾燥させた。これらの効果は最終的に、火星を断続的に居住可能な砂漠惑星へと導いたと、研究チームは提案している。ただし、ゲール・クレーターのサンプルが火星全体の炭酸塩濃度を代表しているかどうかを検証するには、他の地域からも追加のサンプルを採取して調査する必要があると、著者らは結論づけている。

Kite, E.S., Tutolo, B.M., Turner, M.L. et al. Carbonate formation and fluctuating habitability on Mars. Nature 643, 60–66 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09161-1
 

doi: 10.1038/s41586-025-09161-1

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