非がん細胞が引き起こす侵襲性の強い大腸がん
Nature Genetics
2015年2月24日
Non-cancer cells define aggressive colorectal cancer
非腫瘍細胞とその付近のがん細胞との相互作用によって侵襲性の強い大腸がんのサブタイプが発生することを報告する2編の論文が、今週のオンライン版に掲載される。これらの論文には、マウスに移植されたヒトがん細胞に関する研究について記述され、さまざまなタイプの大腸がん患者に対して適確な治療法を選択するうえで役立つことが期待されている。
大腸がん(CRC)の転帰は、患者によって大きく異なっている。進行期の大腸がんの患者のほぼ半数は、治療法に抵抗性を示し、治療中に再発する。この2つの独立した研究では、腫瘍とそれに隣接する(正常な)間質細胞での遺伝子発現プロファイルを用いることで、患者の予後不良を予測できる特異的な遺伝子発現パターンが明らかになった。
Claudio Isellaたちは、大腸がん患者のデータを解析して、転帰不良の患者において高発現する遺伝子の多くが、間質細胞で発現している可能性を明らかにした。Isellaたちは、ヒトのがん細胞を移植したマウスから得たデータを用いて、この仮説を検証し、この高発現する遺伝子がヒトのがん組織ではなく、その周囲のマウスの組織に由来することを見いだした。
一方、Eduard Batlleたちは、周囲の間質細胞に由来する類似の遺伝子発現パターンが患者の転帰不良と相関していることを明らかにして、そのうえで、腫瘍と正常な細胞との間のクロストークにトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達経路が関係していることを見いだした。そして、Batlleたちは、患者由来の腫瘍性オルガノイドを樹立した。これは、シャーレ上で作製した結腸のミニチュアで、患者の体内で起こることを模倣できる。Batlleたちは、オルガノイド細胞をマウスに移植し、TGF-β経路阻害薬(臨床試験実施中)の投与によって腫瘍の進行を抑制できる可能性のあることを明らかにした。
doi: 10.1038/ng.3224
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
微生物学:マウスにおけるマイクロバイオームと仔の健康との関連Nature