注目の論文
小包で届く免疫
Nature Immunology
2013年7月8日
Immunity comes in small packages
ウイルスは、宿主の免疫系による破壊を逃れる戦略を駆使して慢性感染を引き起こすが、マウスがこれを避けるために利用するしくみについて、報告が寄せられている。
Zhenghong Yuanたちは、マウスのエキソソーム(細胞由来の小胞)に注目し、肝炎ウイルスの制御に役割を果たしている可能性を探った。エキソソームは、ひとたび細胞から放出されると、細胞間の情報交換に重要な役割を果たすが、免疫の観点からの研究はほとんど行われていない。Yuanたちは、肝臓に肝炎ウイルスが存在するとその刺激によって、肝臓に存在するクッパー細胞などの感染抵抗性細胞からエキソソームが放出され、ウイルス感受性をもつ肝細胞へと伝わることを発見した。これらのエキソソームには多様な抗ウイルス分子が高濃度に含まれ、肝細胞はこれを利用してウイルス感染に抵抗することができる。
このエキソソームには実にさまざまな抗ウイルス分子が存在するため、ウイルスとしても、それら1つ1つに対して回避機構を進化させるのは、なかなか難しい。したがって、エキソソームを利用して多数の分子をまとめて伝えるという方法は、免疫系の効果的な武器となる。また、エキソソームを阻害するとマウスの肝炎発症が増えることもわかった。つまり、エキソソームの放出を誘発すれば、ある種のウイルス感染の治療に役立つ可能性がある。
doi: 10.1038/ni.2647
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
微生物学:マウスにおけるマイクロバイオームと仔の健康との関連Nature