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免疫記憶の多重構造

Nature Immunology

2009年10月26日

Layered immunologic memory

ワクチン接種によって、抗体を産生する免疫記憶細胞の異なった複数の集団が生じることがわかった。

記憶B細胞は、特定の微生物に関する「記憶」をもつ免疫系の監視チームで、その後の感染に対し、病原体特異的な抗体を分泌してすぐに対応する。J-C Weillたちは、この記憶B細胞を「目で見る」ことができるように、蛍光タンパク質を発現するようワクチン接種時に細胞を持続的に標識する方法をマウスで開発した。そしてワクチン接種マウスを1年以上にわたって観察し、脾臓と骨髄に記憶B細胞集団が数種類存在することを明らかにした。これらのB細胞は、IgM抗体、IgG抗体両方を作る能力をもっていた。IgM抗体とIgG抗体は微生物病原体を同一の方法で認識するが、それを除去するために誘起する免疫応答が異なっている。

Weillたちは、これらのIgM型記憶細胞に、免疫応答の発生に必要な特殊な領域、胚中心においてさらに「教育」を受け、抗体応答を微調整する能力があることを発見した。実際に、胚中心でIgM型記憶細胞がIgG型記憶細胞へと切り替わることがわかった。これに対してTgG型記憶細胞は胚中心に戻ることはなく、次の感染時にはすぐに抗体の分泌を開始する。また、IgM型記憶細胞は持続期間が長く、12か月にわたる観察期間の間ずっとみられたが、IgG細胞のほうは6か月後には減少した。

これらの知見は、IgM型B細胞が初期応答を担い、IgG型B細胞が抗体産生に必要な長期の記憶細胞として働くとするこれまでの見方を覆すものである。

doi: 10.1038/ni.1814

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