注目の論文
ガラテアに命を
Nature Medicine
2008年12月1日
Bringing Galatea to life?
軟部組織が骨に変化する異所性骨化を進行させる鍵の1つは炎症らしい。病気にかかわる遺伝子のタンパク質産物の阻害剤に、ある程度の治療効果があることも明らかになり、この悲惨な病気の治療に希望がみえてきた。
古代の神話ピグマリオンでは彫像が生命を得て動き出したが、これとは逆に異所性骨化では、患者の線維性組織が「骨化」し、固く動きにくくなる。異所性骨化のみられる主な病気の1つが進行性骨化性線維異形成症(FOP)で、その約98%は、ある特異的骨形成タンパク質受容体の変異が原因である。
ヒトの場合と同じ変異をもったFOPマウスモデルはまだ作られていないが、P Yuたちは、原因となる変異型に類似した変異受容体を発現させることによって、一般的症状のマウスモデルを開発した。この病気を引き起こすには、単にこのタンパク質受容体の変異型を発現するだけでは不十分で、ほかに炎症刺激も必要なことが判明した。また、炎症をグルココルチコイドで抑えるという臨床でよく用いられる治療法が、このモデルの異所性骨化の発生を減少させることもわかった。
重要なことだが、このタンパク質受容体を阻害する低分子化合物も、同様に病気の進行を抑制する。グルココルチコイドの長期投与は深刻な副作用を引き起こすので、受容体阻害は画期的な治療法になる可能性がある。ただし、ヒトでの臨床試験の検討に至るまでにはもっと多くの研究を重ねる必要があると、Yuたちは述べている。
doi: 10.1038/nm.1888
注目の論文
-
11月14日
医学:豚からヒトへの腎臓移植の長期経過観察Nature
-
11月14日
生態学:鳥インフルエンザがサウスジョージア島の繁殖期のゾウアザラシ個体数を半減させるCommunications Biology
-
11月13日
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
11月11日
加齢:多言語使用は老化の加速を防ぐかもしれないNature Aging
-
11月11日
バイオテクノロジー:超音波がマウスの脳卒中後の脳内残留物を除去するのに役立つNature Biotechnology
-
11月6日
神経科学:時間の経過とともに発達する脳の変化を解明するNature
