【生理】母乳が一番である理由
Nature Communications
2012年8月22日
Physiology: Why breast milk is best
母乳の品質を保つことによって授乳期の新生仔を炎症から守る免疫細胞上の受容体の存在が明らかになった。リポタンパク質受容体VLDLRに抗炎症作用があり、免疫細胞から母乳への保護酵素の分泌を調節していることがわかったのだ。この研究結果を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
母乳には、さまざまな栄養素と保護分子が含まれている。そのうちの一つが血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAFAH)という酵素で、免疫系が十分に発達していない新生仔の血液に含まれる血小板活性化因子(PAF)という炎症誘発性脂質分子を分解する。VLDLRは、これまでのところ、脂質代謝と脳の発生・発達との関連で研究されることがほとんどだった。
今回、Y Wanの研究チームは、VLDLRをもたない母マウスから授乳されている仔マウスで全身性の炎症を観察した。こうした症状は、母乳にPAFAHが含まれていないために仔マウスの血液中のPAF濃度が高くなったことを原因としていた。Wanたちは、母乳のPAFAH濃度がマクロファージという免疫細胞上のVLDLRによって調節されており、VLDLRが活性化すると、マクロファージがPAFAHを産生し、分泌することを指摘した。
この新知見は、新生児の炎症性疾患の一部について、その原因に関する新たな手がかりとなりうるものであり、PAFとの関連性が知られる成人の炎症性疾患、例えば、クローン病、アテローム性動脈硬化症、喘息に関する手がかりにもなる可能性がある。
doi: 10.1038/ncomms2011
注目の論文
-
11月14日
医学:豚からヒトへの腎臓移植の長期経過観察Nature
-
11月14日
生態学:鳥インフルエンザがサウスジョージア島の繁殖期のゾウアザラシ個体数を半減させるCommunications Biology
-
11月13日
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
11月11日
加齢:多言語使用は老化の加速を防ぐかもしれないNature Aging
-
11月11日
バイオテクノロジー:超音波がマウスの脳卒中後の脳内残留物を除去するのに役立つNature Biotechnology
-
11月6日
神経科学:時間の経過とともに発達する脳の変化を解明するNature
