医学:体重減少後の維持に役立つ可能性のある戦略
Nature Medicine
2026年5月13日
Medicine: Strategies that may help keep weight off
注射薬治療や食事療法で減量した体重をその後も維持する方法を検討した、互いに関連性のない2件のランダム化比較試験の結果を報告する論文が、Nature Medicine に掲載される。これらの研究結果から、経口投与されるGLP-1(glucagon-like peptide 1;グルカゴン様ペプチド1)受容体作動薬の1日1回投与、あるいは細菌由来のサプリメントの1日1回摂取が、過体重または肥満の人々において、これまでに達成された減量効果の維持に寄与する可能性が示唆された。
注射用GLP-1受容体作動薬や食事療法は、肥満患者の減量につながるものの、治療終了後に体重が再び増加するケースが多いことも報告されている。オルフォルグリプロン(orforglipron)は、肥満および2型糖尿病の治療薬として研究中の経口GLP-1受容体作動薬である。この薬剤を使用することで、持ち運びや冷蔵保存など、注射にともなう実用上の困難を回避できる可能性がある。一方で、減量後の体重維持を目的として、腸内細菌叢を標的とした治療戦略の研究も進められている。
二重盲検無作為化の第3b相試験において、Louis Aronneら(ワイル・コーネル・メディカル・カレッジ〔米国〕)は、GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(tirzepatide)またはセマグルチド(semaglutide)の注射治療を72週間完了した米国の参加者376名(平均年齢48.6歳)を対象に研究を実施した。その後52週間にわたり、参加者はオルフォルグリプロンまたはプラセボを1日1回投与された。以前チルゼパチドで治療を受けた群において、オルフォルグリプロン投与群の参加者は52週時点で以前の減量分の74.7%を維持したのに対し、プラセボ群では49.2%であった。以前にセマグルチドによる治療を受けた群では、その数値はそれぞれ79.3%と37.6%であった。最も多く報告された副作用は、胃腸障害であり、その重症度はおもに軽度から中等度であった。
別の論文において、Ellen Blaakら(マーストリヒト大学医療センター〔オランダ〕)は、オランダの過体重または肥満の成人90名(平均年齢51.8歳)を対象に、二重盲検無作為化の比較試験を実施した。参加者は、まず、減量のために8週間にわたり低カロリー食を摂取した。そのうち84名(体重の8%以上を減量した者)は、その後24週間にわたり健康的な食事を続け、低温殺菌された細菌アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila) MucTのサプリメントを毎日摂取する群、またはプラセボを摂取する群に割り当てられた。細菌サプリメントを摂取したグループは、第1段階で減量した体重の13.6%をリバウンドさせたのに対し、プラセボを摂取したグループでは32.9%のリバウンドが見られた。サプリメントを摂取した参加者は、研究開始時からプラセボ群よりも3.1キログラム多い総減量を達成した。また、サプリメント群ではインスリン感受性の維持が良好であり、研究期間中に治療に関連する重篤な副作用は報告されなかった。
これら2つの研究結果を総合すると、食事療法による減量後に、注射療法からオルフォルグリプロンへの切り替え、あるいは腸内細菌叢を標的としたサプリメントの使用のいずれかによって、初期の減量効果を維持できる可能性があることが示唆される。しかし、両研究の著者らは、研究期間が短期間であることや、対象集団の多様性が限られている点に留意している。これらのアプローチを長期的な肥満治療にどのように活用できるかを明らかにするには、さらなる研究が必要となる。
- Article
- Open access
- Published: 13 May 2026
Aronne, L.J., Horn, D.B., le Roux, C.W. et al. Orforglipron for maintenance of body weight reduction: the double-blind, randomized phase 3b ATTAIN-MAINTAIN trial. Nat Med (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04386-7
- Article
- Published: 13 May 2026
Mount, S., Canfora, E.E., Jocken, J.W. et al. Pasteurized Akkermansia muciniphila MucT for weight loss maintenance in people with overweight and obesity: a controlled randomized trial. Nat Med (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04394-7
doi: 10.1038/s41591-026-04386-7
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