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気候変動:気候変動が作物生産に与える影響を評価する

Nature

2025年6月19日

Climate change: Assessing the impact of climate changes on crop production

Nature

ほとんどの主食作物は、気候変動の影響を抑える緩和策を考慮しても、気候変動により生産量が大幅に減少すると予想される。この研究結果を報告するモデリング論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この研究では、トウモロコシ、大豆、コメ、小麦、キャッサバ、およびソルガムの6つの主食作物を評価し、コメだけが大幅な損失を回避できる可能性があることを発見した。

気候変動は、世界の食料システムに影響を及ぼすと予想されているが、その影響の規模や、農法を変えるなどの適応戦略がどのようにこれらの影響を緩和するのかについては議論が続いている。これまでの研究では、米国など特定の地域の結果に焦点を当ててきたが、適応の影響については相反する結論が出ている。いくつかのモデリングでは、適応が世界の農業生産性に影響を与える可能性が示唆されている。しかし、現実の生産者が世界規模でどのように適応できるかについての研究は限られている。

Andrew HultgrenとSolomon Hsiangら(スタンフォード大学〔米国〕)は、トウモロコシ、大豆、コメ、小麦、キャッサバ、およびソルガムの6種類の主食作物について、54カ国12,658地域のデータを基にデータセットを作成し、21世紀における生産者の適応の影響を推定した。その結果、産業革命以前の水準から気温が1℃上昇するごとに、生産量は1人1日当たり120キロカロリー減少し、これは現在の1日の消費量の4.4%に相当すると推定された。高排出シナリオでは、今世紀末までにトウモロコシの生産量は、米国、中国東部、中央アジア、アフリカ南部、および中東で最大40%減少し、小麦の生産量はヨーロッパ、アフリカ、南米で15–25%、中国、ロシア、米国、およびカナダで30–40%減少する可能性があるという。著者らは、所得の増加と適応戦略の実施により、適応なしシナリオと比較して、2050年までに世界の損失を23%、2100年までに34%削減できると提案している。

著者らは、世界的な影響は、適応が限定的で気候に恵まれた現代の穀倉地帯における損失によってもたらされていることを明らかにし、低所得地域の損失も相当なものであることを指摘している。著者らは、食料安全保障を確保し、気候の影響を緩和するためには、さらなる適応と潜在的な耕作地の拡大が必要かもしれないと結論づけている。

Hultgren, A., Carleton, T., Delgado, M. et al. Impacts of climate change on global agriculture accounting for adaptation. Nature 642, 644–652 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09085-w
 

doi: 10.1038/s41586-025-09085-w

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