COVID-19:重症COVID-19には腸内の真菌が関係している
Nature Immunology
2023年10月24日
COVID-19: Gut fungi associated with severe COVID-19
重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に見られる過剰な炎症性免疫応答に、腸内微生物相が一役買っている可能性があることを報告する論文が、Nature Immunologyに掲載される。この観察結果は、重症COVID-19における抗真菌治療の潜在的有用性を示唆している可能性がある。
これまでに行われた研究で、COVID-19に感染した患者は腸内微生物の組成が変化したり、腸障壁が機能不全だったりする傾向があり、そのため細菌の生産物や毒素の血中への移動が増え、炎症応答が亢進する可能性がある。微生物相の真菌は免疫応答を活性化することが明らかになっているが、COVID-19に際して腸内の真菌が宿主の免疫にどのような効果をもたらすかについての研究は少なかった。
今回Iliyan Ilievらは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の第1波の間に米国で集められた3つのコホートのCOVID-19感染者91人について、腸内微生物相(真菌微生物相)を調べた。91人のうち66人は重症COVID-19、25人は中等症と分類された。データをCOVID-19に曝露されていない36人と比較したところ、重症のCOVID-19患者では、腸内の真菌に対する抗体レベルが増加しているが、肺や皮膚の真菌に対する抗体レベルは増加していないことが分かった。また、このような抗体レベルの上昇は、中等症のCOVID-19患者には見られなかった。COVID-19重症患者では、真菌に対する抗体レベルは、腸内のカンジダ菌(Candida albicans)量の増加や血中の好中球(抗真菌応答に関係する免疫細胞の一種)数の増加と相関していた。さらに、COVID-19回復後も最長1年にわたって、好中球へと分化する幹細胞が、真菌に応答するようプライミングされていた。COVID-19重症患者から単離したカンジダ菌を生着させたマウスでは、SARS-CoV-2感染後の肺における好中球の浸潤と活性化が、抗真菌治療や炎症性メディエーターIL-6の阻害によってある程度改善された。
Ilievらは、COVID-19重症患者では、真菌抗原が腸障壁の乱れによって血中に入り、炎症応答を増幅している可能性があると述べている。
doi: 10.1038/s41590-023-01637-4
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