工学:センザンコウから着想した小型医療ロボット
Nature Communications
2023年6月21日
Engineering: A pangolin-inspired tiny medical robot
センザンコウに着想を得て、ヒトの体内で安全かつ低侵襲な医療処置を行うための小型ロボットが作製されたことを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。将来的には、このテザーなしソフトロボットが、形態を変化させることによって、たどり着くのが難しい体内部位(例えば、胃や小腸)にも到達できるようになると期待されている。
これまでに低侵襲な医療処置を行うために磁気ソフトロボットや固体金属製ロボットが開発されているが、機能性の点でも安全性の点でも十分なものではなかった。センザンコウは、角質鱗で覆われているにもかかわらず、硬いウロコを組織化して重なり合った構造をとることで、柔軟な動きができ、移動の際に硬いウロコが邪魔にならない。
今回、Metin Sittiらは、センザンコウから着想を得て、サイズが1センチメートル × 2センチメートル × 0.2ミリメートルのミリロボットを設計した。このロボットは、ウロコが重なり合う設計になっており、必要な時に発熱し、形態を変え、転がることができる。実験室内での概念実証実験では、このロボットは、70℃まで加熱可能で、さまざまな組織の医学的処置を実行でき、将来的に臨床応用の可能性につながることが明らかになった。その例として、たどり着くのが難しい体内部位でのがん温熱療法や加熱による止血がある。また、このロボットは、磁性をなくして積み荷を放出することができるので、将来的には薬剤の送達に使用できるかもしれない。
この技術は、さらなる検証を必要としているが、治療薬を積み荷として標的部位に送達することや温熱療法の適用のための有用な臨床ツールになるかもしれない。
doi: 10.1038/s41467-023-38689-x
注目の論文
-
5月9日
生物学:人為起源の地球規模の変化が感染症伝播リスクに影響を及ぼしているNature
-
5月8日
生態学:マッコウクジラの複雑な鳴音を調べるNature Communications
-
5月7日
遺伝学:APOE4遺伝子バリアントはアルツハイマー病の他とは異なる遺伝的タイプである可能性があるNature Medicine
-
5月3日
動物学:薬用植物を使って創傷治療を行う野生動物が初めて報告されるScientific Reports
-
5月3日
進化学:地球の磁場が弱くなっていたために地球上の生物の多様化が進んだのもしれないCommunications Earth & Environment
-
5月2日
人類学:長期的レジリエンスは苦難によって構築されるNature